Blogかわきせ日記帳

「マンガばっかり読んで!」とは言えない時代になった

こんにちは、かわきせ日記帳の木村です。
まだ年賀状は送り続けているので、住所がわかっている人には開業のお知らせをお送りしようと先日郵便局に行きました。昔から記念切手が好きで切手売場は定期的に見るようにしているのですが、この5月に発売されたグリーティング切手は63円も84円もかわいさと美しさと懐かしさを併せ持ったようなすてきなデザインで、ポストカードしか送らないのに両方とも買ってしまいました。売場の方に「このデザインとってもいいですね」と思わず伝えたら、84円のデザインは特に人気で数もかなり減っているのだとか。

その昔、日本郵便の切手デザイン室に取材に行ったことがありますが、当時は5人ほどのデザイナーさんがすべての絵柄を制作しておられた気がします。そこで新人だという女性の方をご紹介いただいたのですが、後に年賀状に描かれていた温泉に入る猿の絵がかわいくデザイナーさんを調べたところ、その方だったと知った時はなんだか感動してしまいました。年賀状で12年ごとに仕掛けのあるデザインをされたり、昨今の新しいものでは特殊切手の「花の彩りシリーズ第2集など」でデザインをされていたりと今もご活躍のご様子でした。最近はお若いデザイナーさんも増えているようで、今までにない印象のデザインも増えていて楽しいです。郵便事業は縮小しているとはいいますが、手紙って届くとやっぱり嬉しいんですよね。

■日曜日なので好きなマンガをオススメします

今日はマンガのご紹介でもしてみようと思います。仕事と関係あるようでないような、ジャンルもバラバラな作品ですが、どうぞお付き合いください

大槻閑人、原作:子鹿ゆずる「アンメット−ある脳外科医の日記−1〜15(連載中)」(講談社)

父が脳梗塞で倒れた後、人の脳がどんな働きをしているのか知りたいと本を探している時に見つけた作品です。元脳外科医だった方が原作だけあり、脳に起こるさまざまな症例とそれに関わる脳の機能や身体への影響が自然に描きこまれているので、読み進めるうちに(なんとなくでも)理解することができます。と言っても症例別の短編集ではなく、主要な登場人物たちに対する地域医療を重視する個人病院をグループ化しようとする集団の企みがストーリーの根底にはあり、さらに脳梗塞後の麻痺が残る社員と労働環境の問題、難民申請中の外国人を襲った脳梗塞とビザ申請の問題、業務中に右腕を失い幻肢痛を患ったパティシエと日本ではまだ使える人が少ない筋電義手の問題など、申請取次や障害福祉、医療法人業務にも関係がありそうな社会問題も散りばめられ、単なる医療マンガには収まらない奥深さが感じられます。

恵三朗・草水敏「フラジャイル 1〜27(連載中)」(講談社)

個人的にファンの病理医ヤンデル先生(札幌厚生病院病理診断科主任部長 市原真氏)がオススメし続けていて、読み始めたら本当に止まらなくなってしまった作品です。神経内科勤務だった新人女性医師がある事件を経て、偏屈な病理医とただ一人の臨床検査技師しかいない病理部に転属。さまざまな症例と経験を経て病理医として成長していく過程を描いたパートから、一人前の病理医として認められる中で新たなキャリアを見出し始める昨今のパートまで本当にずっと目が離せないので、特に行政書士の仕事とは関係ないけどぜひ読んでみてほしいです。

石井さだよし、原作:星野茂樹「解体屋(こわしや)ゲン 1〜100(連載中)」

100巻発売記念として100巻1100円で買えたので思わず買ってしまった作品。建設する会社があれば解体する会社もあるわけですが、こちらは解体屋さんの話です。オーストラリアの爆破解体企業で腕のいい技師として活躍していた男が、帰国後にふらふらしていた所を拾われて会社を立ち上げることになり、難しい爆破解体にどんどん取り組み成功させていくというストーリー。今ではどの解体現場でも資源分別が徹底されて産廃業者へと渡っていくわけですが、以前は何もかも一緒くたに壊して捨てる(ミンチ解体と呼ぶらしい)のが普通だったとこのマンガで知りました。解体物には人体に有害な材質もあるでしょうから、それを扱う産廃業者の指定申請が大変なのもわかる気がします。
ちなみに爆破解体というと40代半ばの滋賀県民としては、びわ湖岸にあった幽霊ビルの爆破中継を必ず思い出すのですが、あの失敗した解体を行った外資企業をモデルにしたと思しき会社もこの作品には出てきます。

福田雄一「工務店の日報」(KADOKAWA)

Instagram経由で知り、ずっとタイムライン上で見ていたのですがついに購入してしまいました。大阪のある工務店に大卒で入社した女の子細見しゃんが、現場先で気づいたことや出会った人、外注の一人親方さんたちの話や社長に任された案件のことなどをゆるく綴っている、まさに「日報」。その絵柄のゆるさや面白さから、社史や社員紹介などを行っているKTC(京都機械工具株式会社 @kyototool )「工具メーカーの日報」、「外国人技能実習生あるある」などを描いたJAC(一般社団法人建設技能人材機構 @kensetsutokuteiginou)「ジャックの日報」、「建築スタッフあるある」などを描いたパナソニック「TAMARIE」での書き下ろしマンガなど、さまざまな企業とのコラボも増えており、なぜか全部追っかけています。

佐原実波「ガクサン!1〜7(連載中)」(講談社)

モーニングで連載されている作品。ミーハーで特に取り柄のなかった主人公茅乃が学習参考書(学参/ガクサン)専門出版社に中途入社。学参に対する知識と愛情は人一倍ありながら、偏屈な性格と物言いのキツさで編集部からお客様案内係へと飛ばされた福山の後輩として自分なりにSNSを駆使してその立場を確立していきます。店頭でフェアをしたり本屋の調査に行ったり、案内係に来た質問に答えたりする中で、学参編集の面白さや奥深さ、難しさなどを知っていく物語です。学生向けだけでなく、6巻では大人の資格取得や社会人浪人と参考書選びの関係について描いた回もあり、自分が試験勉強をしていた時を思い出しました(私は性格的に無理なので予備校に通いましたが……)。

永田礼路「螺旋じかけの海 新装版 1〜5」(作者私家版)

2巻までは「月刊アフタヌーン」で連載されていましたが、医師業の合間を縫って描かれていたそうで途中で連載休止に。その後ご自身で権利を取得され、同人誌として紙とKindleで5巻まで発売されました。そもそもは「医学会総会」のPRマンガ担当としてお名前を知り作品へと遡っていったのですが、こちらは豚の肝臓が人間に移植されるようになった現代のパラレルワールドにも思える、重厚なストーリーとテーマを内包したSF作品。人間とは違う身体を持ち、船の上で日々を送る主人公とその友人。静かな空気感でありながら、後半に向かって大きなうねりを上げる展開がものすごいです。あと小さい頃からマンガを描いていたとかではなく、大人になってから描き始めて商業誌連載まで実現したというエピソードだけでもすごすぎるので、その経緯を描いた作品もぜひ読んでみてほしいです。

桜沢エリカ「わたしに優しい夜」(マガジンハウス)

LGBTQ+のことが盛んに言われるようになってひさしいですが、桜沢エリカと岡崎京子は昔から彼らや彼女たちを特別視することなくストーリーに描くマンガ家という印象がありました。90年代からクラブフレンドリーな人々だったから、ということもあるかもしれません。この作品も、姉の亜子がおせっかいで少しわがままなゲイの弟乃武夫と一緒に暮らし始めたことで起こるあれやこれや……という内容ですが、亜子にとっての乃武夫は優しく励ましてくれるかけがえのない弟(妹)でしかなく、ことさらに何かを強調することのない描き方がしてあって好きです。そういえば、20代の頃よく遊んでくれたゲイの友人のスナップ写真がおしゃれな男子として載っていて驚いたこともあったな〜。

江口寿史「ストップ!ひばりくん」(集英社)

トランスジェンダーの人について特に何にも思わないのは、小学生の頃から「おしゃれな女の子の格好をした女の子よりかわいい男の子」のひばりくんに触れてきたからではないか、という気がしています。男でも女でもしたい格好をしたらいいんだと思うようになれたのは、江口寿史が描くひばりくんのおしゃれさによるものだったのだろうか。
でも、もしそうだったのであれば、幼い時にカッコいい存在として教えてくれたこのマンガに出会えて、今のわたしは本当によかったと思っています。

 

あずまきよひこ「よつばと!1〜15(連載中)」(KADOKAWA/アスキー・メディアワークス)

有名すぎてわたしが紹介するまでもないと思いますが、金髪の小さな女の子小岩井よつば、と、よつばを養父として育てる翻訳家の独身男性が新しい街で生活を始めるという話。乗り換えて西武線で池袋まで行く場面があるので、恐らく西武池袋線沿線の所沢か保谷あたりに家があるのでしょう。よつばは男性を「とーちゃん」と呼び、隣家の三姉妹やとーちゃんの友人たちと仲良くなり、日常の小さなことを見つめ、時にられ、時に褒められ、時に新しい楽しみや遊びを知りながら少しずつ成長していきます。発売が年単位のせいか読者のわたしたちまでよつばの成長を自分時間で捉えてしまい、最新刊のラストシーンはとーちゃんの気持ちがわかってちょっとグッと来てしまいました。よつばととーちゃんのやり取りを読んでいると、本当の家族とは何なのか、血が繋がっていなければ家族ではないのだろうか、と考えさせられる時があります。

■他にも面白いマンガは山ほどあるわけで……

マンガばかり読んでいると云々、というのは昔のお話。今や職業を詳細に描く作品や考え方に影響を与えるような作品も多く、また社会問題を扱った作品などには文章ではなく「マンガだからこそ描ける」といった興味深い作品もたくさん増えています。わたしもそんなに読んでいるほうではないのですが、個人的に好きな作品をご紹介してみました。面白いマンガをご存じの方がいらっしゃいましたらぜひ教えてください。

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